別会社を作ると消えない負担が発生します。立ち上げの費用ではなく、毎年かかるほうです。
一つ目は、経理と申告が二組になること。帳簿、決算、申告、社会保険の手続き。規模が小さくても、一組分の作業はほぼ丸ごと増えます。
二つ目は、人の行き来に手続きが要ること。同じグループでも法人が違えば、兼務や出向の形を決める必要があります。『ちょっと手伝って』が、書類の要る話に変わります。
三つ目は、数字が二つに分かれること。全体を見るには合算が必要で、合算には法人間の取引を消す作業が要ります。立ち上げ期にいちばん見たい『全体でいくら使ったか』が、いちばん見えにくくなります。
では分けて軽くなるものは何か。判断の経路です。
既存の社内でやると、既存部門との調整が入ります。設備を使う順番、人の取り合い、価格の整合。調整そのものが時間を食います。
つまり天秤にかけるのは、調整の手間が減る分と、管理の手間が増える分です。新規事業がまだ小さいうちは、増える側が大きくなりがちです。
逆に、分けたほうがいい場面はあります。三つに限られます。
一つ目は、外から資金や人を入れるとき。出資を受ける、提携先と共同で持つ。既存の会社に入れるのが難しい場合、器を別にする理由があります。
二つ目は、許認可の要件が違うとき。業種によって必要な許可や人員の要件が異なり、既存の法人では取れないことがあります。
三つ目は、既存の取引先と正面からぶつかるとき。看板を分けないと説明がつかない場合です。ただしこれは、分けても相手には伝わることが多いので、隠す目的なら効きません。
この三つに当てはまらないなら、先に事業部として試すほうが順番として軽い。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。法人が複数あるので、分かれていることの手間は毎月実感しています。
はっきり言えるのは、分けた後に元へ戻すのは、分けるより難しいということです。作るのは手続きですが、畳むのは手続きに加えて取引先への説明が要ります。片道の判断だと思って決めたほうがいい。
そして実際に効いたのは、法人を分ける前に数字を分けたことでした。事業部のまま別建てで数字を取ると、一年で判断材料が揃います。この数字があると、分社する場合も根拠を持って動けます。
もう一つ。分社の相談で出てくる理由のうち、半分くらいは『既存部門が協力してくれない』でした。これは法人を分けて解く問題ではありません。分けても、設備と人は同じ場所にあります。協力の対価を決めるほうが、器を変えるより速い。
検討しているなら、先に一つ確かめてください。いま困っているのは、判断の経路か、協力の取り合いか。後者なら、分けても解けません。
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※本記事の整理は一般的な考え方であり、成果を保証するものではありません。会社の設立、組織再編、グループ内の取引や税務の取扱いには会社法および税法にもとづく定めがあり、要件や影響は個別の事情によって異なります。実行にあたっては顧問税理士および顧問の弁護士に必ずご確認ください。本文中の数値はすべて説明のための仮の例です。
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