従業員17名のサービス業。二年前に同業ではない一社と組み、共同で一つのサービスを提供していました。
こちらが現場の作業を持ち、相手が窓口と見積を持つ形でした。売上は月に三百万円ほど、両社で分けていました。
電話の内容は、相手の本業が忙しくなり手が回らなくなったというものでした。揉めた末の解消ではありません。
社長が最初に言いかけたのは、では残りの分の精算をどうするかでした。金額の話です。
言いかけてやめました。精算より先に、確かめることがあると気づいたからです。
提携が終わるときに動くのは、お金だけではありません。
客、設備、名前。この三つが、どちらに残るのかで、解消後の商売が変わります。
そして三つとも、始めるときに決めていないことが多い。この会社も決めていませんでした。
金額の交渉を先に始めると、三つが曖昧なまま解消の日が来ます。日が来てから気づくと、交渉の余地がありません。
相手が挙げた理由が本当かどうかは、たいてい分かりません。
深く問うべきかは、一点で決まります。その理由によって、こちらの打ち手が変わるかどうか。
本業が忙しいという理由なら、打ち手は変わりません。こちらが条件を良くしても戻りません。
一方、こちらへの不満が理由なら、話は別です。条件を変える余地があるかもしれない。
聞き方は一つです。こちらに直す点があれば教えてほしい、と一度だけ聞く。
一度聞いて出てこなければ、理由の追及はやめます。追及している時間に、三つの確認が進みません。
交渉の結果、解消は三か月延びました。相手も揉めたくなかったので、延長は通りました。
客については、二十七件が相手に残りました。名義がそうだったので、争う余地がありません。
こちらの名義だった五件は残り、そのうち三件が今も続いています。五件から再出発した形です。
受付のシステムは、三か月の間に別のものを用意できました。名前は使えなくなり、別の名前で出し直しています。
社長が後から言ったのは、こうでした。二年前に三つを決めていれば、二十七件のうち半分は残った。
そして次に組むときは、始める日に客の名義を決めてから始めています。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。組んだ相手が抜けたことも、こちらが抜けたこともあります。
抜ける側に立って分かったのは、抜ける側は申し訳なさで動いているということでした。だから交渉の初期は、相手が譲りやすい時期です。
この時期に金額の話をすると、金額だけが決まります。客と設備と名前は、そのまま相手に残ります。
やってしまった失敗は、まさにそれでした。精算の金額で有利な条件を取り、客を全部失いました。
いま組むときに必ず書いているのは、客の名義です。どちらの社名で契約するか。一行で済みます。
もう一つ。別れ方を書くと、組むのが早くなりました。別れ方が決まっていないと、どちらも慎重になって話が進みません。
いま組んでいる相手がいるなら、最初に一つだけ確かめてください。客は、どちらの社名で契約しているか。数えるだけです。
SEED(BEYOND PLAYBOOK)は、提携の雛形を外から渡すのではありません。BEYOND Holdings 自身が組み、抜かれ、抜けてきた当事者として、顧客名義の棚卸し → 設備と契約の帰属確認 → 名前の扱いの整理 → 必要な期間の算出までを、貴社の商売の形に合わせて一緒に整理します。
まずは無料の新規事業の種・診断で、自社にどんな種があるかを確かめてみてください。結果を見ながら、いまの提携で何を先に書くかを一緒に決めましょう。
※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の社数・金額・期間はすべて説明のための仮の数値です。業務提携や共同事業の解消にあたっては、契約書に定められた解約の要件と予告期間、顧客との契約の承継、設備や在庫の帰属、商標その他の権利の取扱い、競業避止や秘密保持の範囲など、契約上および法令上の論点があります。顧客情報を一方から他方へ移す場合には個人情報の保護に関する法令上の要件もあります。解消の協議に入る前に顧問弁護士に必ずご相談ください。
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