【想定事例】従業員12名の印刷会社。社長の田村さん(仮名)は口癖のように言います。『うちは見積もりをちゃんと出している。断られるのは価格で負けるからだ』。実際、問い合わせにはその日のうちに丁寧な見積書を返している。仕事は速い。それなのに、受注はなかなか伸びない。
ある月、田村さんが半年分の見積もり控えを机に並べてみました。出した数は48件、受注は11件。残りの37件のうち、はっきり『他社に決めた』と連絡が来たのは、たった6件。残る31件は、返事すら来ないまま止まっていたのです。価格で負けたのではない。多くは忘れられ、後回しにされ、そのまま消えていた。田村さんの見積もりは、出した瞬間に相手のメールの奥へ沈んでいたのでした。
田村さんは大がかりな営業改革をしませんでした。人も増やさない。やったのは、見積もりを『出して終わり』にしないための、小さな三つの仕組みだけです。
【想定事例のその後】半年後、田村さんの会社は見積もりの数をほとんど増やしていません。それでも受注は目に見えて伸びました。理由は単純で、これまで放置して消していた31件のうち、いくつかを拾い直せるようになったから。返事が来なかった案件に3営業日後・10日後と軽く二度触れるだけで、『そういえば検討していました』と息を吹き返す案件が確かにあったのです。
この想定事例が示すのは、新規開拓の前にやるべきことがある、という当たり前の事実です。すでに見積もりを出した相手は、こちらに一番近い見込み客。広告を打って新しい人を探すより、目の前で止まっている案件を追うほうが、はるかに安く確実です。私たちBEYONDも9社を回すなかで痛感しています——一度で決まらないのは当たり前。決めるのは提案の巧拙ではなく、追い切る執念のほうだと。
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※文中の印刷会社の事例は、よくある状況をもとにした想定事例です。背景として、商談後のフォロー不足が失注につながるという一般的な営業実務の知見、および帝国データバンク調査による価格転嫁率42.1%(2025年時点)を参照しました。数値は調査時点・出典により幅があります。