従業員22名の金属加工会社。問い合わせは月に数件あり、そのうち半分は見積まで進みます。ところがそこから先が動かない。
対策として、過去の加工実績を写真付きでまとめた資料を作りました。業種別に並べ、精度と納期も入れた。問い合わせへの返信に必ず添えるようにした。
反応は変わりませんでした。見てもらえた形跡はある。けれど『検討します』から先に進まない。社長は、資料の内容が薄いのだと考えて作り直しを三度しました。
失注した相手の一社に、理由を聞きにいきました。返ってきたのは、こういう話でした。
『資料は見た。悪くないと思った。ただ、社内で推すには弱かった』。
事例集に載っているのは、他社の過去の仕事です。読んだ本人は納得できても、その納得を上司や他部署に移すことができない。自社の案件とは条件が違うからです。
相手の担当者が社内で聞かれるのは、だいたい三つです。本当にうちの図面でできるのか。品質はどう担保されるのか。何かあったとき誰が出てくるのか。事例集は、このどれにも直接答えていませんでした。
切り替えは単純でした。見積を出したあと、工場を見に来ませんかと誘う。これだけです。
最初は気後れがありました。工場は新しくないし、整頓も完璧ではない。見せるほどのものではないという感覚があった。
ところが来てもらうと、相手が見ているのは設備の新しさではなかった。機械の前で加工の段取りを説明したときの、担当者の反応がいちばん変わった。
ただし、何でも見学すれば決まるわけではありません。半年やって、線はここに引けました。
効くのは、相手が『できるかどうか』で迷っているときです。難しい形状、短い納期、初めての材料。この迷いは、口と資料では消えません。
効かないのは、価格で迷っているときです。金額に納得していない相手を呼んでも、来た手間の分だけ気まずくなります。見学は値段を下げる道具ではない。
そして相手が一人で来る場合は、効き方が半分になります。決める人が別にいるなら、その人も一緒に来られる日を探したほうが早い。
半年で、見学に来てもらったのは七社。うち五社から発注がありました。元の歩留まりとは比べものになりません。
副作用もありました。見学したあとに断られた二社は、理由を言ってくれた。来てもらった関係だと、相手も黙って消えにくい。この二つの理由は、そのまま次の改善材料になりました。
そして事例集は、作るのをやめていません。役割を変えました。決めるための資料ではなく、見学に来てもらうきっかけの資料として使う。送り先も、見積を出した相手に絞りました。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。見学を受ける側も、見に行く側も、どちらも何度もやってきました。
見に行く側でわかったのは、整っている工場より、説明が具体的な工場のほうが安心できるということです。設備が古くても、どこに気をつけているかを即答されると、任せられると感じる。逆に、きれいなのに説明が曖昧だと不安が残る。
だから見学の準備で最初にやるべきは、掃除ではありません。『うちはここに気をつけている』を、現場の人が一人一つ言えるようにしておくことです。これは一日では用意できませんが、用意できれば見学以外の場面でも効きます。
もう一つ。見学は、断られても損が小さい打ち手です。値引きと違って、提案したこと自体で何も失わない。断られたら、相手はまだ価格か条件で迷っているということが分かります。それも情報です。
SURGE(BEYOND PLAYBOOK)は、営業の型を外から当てはめるのではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、止まっている案件の棚卸し → 迷いの中身の特定 → 誘う相手の見極め → 当日の段取りと一枚の設計までを、貴社の商売の形に合わせて一緒に組みます。
まずは無料の売上診断で、いま案件がどこで止まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に誘う一社を一緒に決めましょう。
※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の日数・件数はすべて説明のための仮の数値です。見学の受け入れにあたっては、来場者の安全確保、秘密保持、取引先情報の取扱いについて事前の取り決めが必要になる場合があります。